木粉(もくふん)粘土って他の粘土と何が違うの?着色は何ですればいいの?
粘土の種類はいっぱいありますが、その中で、木粉粘土は実は長い歴史のある粘土です。
木粉粘土は何か、どんな特徴があるのか、作品を作った後はどうすればいいのかなどについて説明していきます。
木粉粘土の特徴
木粉粘土は、木の粉(おがくず)を液状の糊と混ぜ、粘土状にしたものを指します。
他の粘土と大きく違う点は下記の2点になります。
・独特な凹凸のある質感
・乾燥後の強度が強い
木粉粘土は他の粘土に比べて粒子の大きい木粉が使われていることが多く、乾燥後も作品表面に木粉の凹凸がわずかに残ります。
フェイクスイーツでクッキー生地などを作る際などにその凹凸の質感が良く合い、採用されることもあります。
また、木の粉は多孔質であり、液状の糊を良く吸い込みます。
この吸い込んだ糊が乾燥すると、木粉の間にしっかりと糊が食い込み、強固な作品に仕上がります。
創作人形などの制作の際には、強度を高めるために木粉粘土を石粉粘土などに混ぜる場合もあります。
人形制作の際は、凹凸のある質感は逆に良くない場合が多く、胡粉やジェッソなどの下地材で下地処理をしてから筆を入れていきます。
デメリットとしては、他の粘土に比べてヒケ(収縮)が大きいという点です。
粘土で作った時の寸法をできるだけ変えたくない場合はお勧めできない粘土になります。
市販されている木粉粘土は、木粉の他に石粉などの無機物の粉末などと混ぜられ、木粉だけを糊と混ぜたものよりも使い勝手の良い状態で販売されています。
市販されている粘土の種類は少ないですが、市販されている木粉粘土について解説していきます。
ウッドフォルモ (㈱パジコ)
少し暗めの茶色をした木粉粘土で、木粉の粒子感がしっかりしていて、特有の凹凸表現に着目して使用したい際に使いやすい粘土です。
ウッドフォルモのみを使用する場合、木粉粘土粒子感がかなり出ますので、人形制作などでは、ごつごつとした木の雰囲気を感じられる温かみのある作品になります。
強度面に関しては、以下に紹介する木粉粘土よりは若干見劣りがあり、切ったり削ったりといった後加工も若干難しいです。粘土の状態である程度作り込んでしまいましょう。
Woody (中部電磁器工業㈱)
桐のような明るい木をした木粉粘土で、比較的粘土粒子が細かく、上品な凹凸を出す粘土です。粘土の状態では固めですが、硬化後はかなり高い強度になるタイプの木粉粘土になります。
特に創作人形の微細な部分の造形などの壊れやすい部分などに使うと特徴が光ると思います。
また、凹凸が細かい為、フェイクスイーツでもミニチュアサイズの作品を作る場合は、こちらの凹凸の方がしっくりきます。
硬化後の切削もしやすく、綺麗に仕上がる為、後加工もしたい作品にはお勧めです。
木粉粘土に特有の「強度」を求める場合は、こちらを選んだ方が良いでしょう。
もくねんさん (北星鉛筆)
鉛筆メーカーが、鉛筆製造の時に大量に発生する木の粉(おがくず)を廃棄しないように再利用することをコンセプトに作られた粘土です。
近年話題のSDGsや教育的要素として選ぶ上では良い粘土になります。
もくねんさんを使った鉛筆づくりキットなども販売されているので、お子さんと一緒に作ってみてはいかがでしょうか。
自在コルク(石井産商㈱)
コルク粘土を木粉粘土と分ける場合もありますが、コルクはコルク樫の樹皮で、このコルクの粉末を粘土状にしたものがコルク粘土なので、ここで紹介します。
コルク粘土自体はいくつかのバリエーションがありますが、使い勝手の良いコルク粘土が自在コルクになります。
他の木粉粘土とは異なり、固まっても弾力性があり、軽い仕上がりになるのが特徴的です。
粘土単体でもコルクで作った独特なオシャレさの作風になりますし、石粉粘土や軽量粘土などと混ぜてもコルク特有の凹凸感が出てくれます。
他の粘土のように硬くはならないので、強度面を補うというよりは、独特の質感を取り入れたい場合や作品を軽くしたい場合に使用すると良いかと思います。
目の荒さも細目、中目の2パターンがあるので、作ろうとしている作品やサイズ感に合わせて選べるのも魅力的です。
木かるねんど(銀鳥産業㈱)
100均などでも良く目にする銀鳥産業㈱から販売されている「木かる粘土」はこれまでの木粉粘土と異なり、軽量粘土ベースの木粉粘土になります。
軽量粘土の特徴である「軽さ」は通常の木粉粘土の焼く1/4程度の重量です。
また、他の粘土と異なり「手につきにくい」という特徴も魅力的です。
ベースが軽量粘土ということもあり、作品は柔軟性があり、固くは仕上がりませんが、フェイクスイーツの材料として軽量粘土に混ぜる前提で木粉粘土を検討している方には、混ぜる手間が省けて良いです。
木粉粘土は自分で作ってもいい!
日本の伝統工芸である雛人形や市松人形で用いられる「桐塑(とうそ)」も木粉粘土の一種になります。
これは桐の粉としょうふ糊(でんぷん糊)を混ぜて作られたものです。
構成がシンプルなので、作ろうと思えばオリジナルの配合の木粉粘土を作ることもできます。
粉の状態の木粉は通販などで手に入りますし、しょうふ糊(でんぷん糊)も手に入れることができます。
自分の気に入った木材、粒子の大きさの木粉を見つけて、粘土状にするのも独自性が出ます。
球体関節人形や創作人形を作成する際に、石粉粘土を使う場面は多いですが、市販のものでは少し強度が足りないといった不満があるときは、木粉としょうふ糊で自作した木粉粘土を混ぜると市販の粘土より強度が出て、細かい加工がしやすくなります。
木粉粘土の着色におすすめの絵具
木粉は多孔質で液体をよく吸いこみます。その為、基本的には液状の絵具は良く吸い込みますが、特におすすめなのはアクリルガッシュです。
木粉粘土は乾燥しても木の色が残りますので、上に塗る絵具は下地の木粉の影響を受けて少し色が暗くなります。
その為、鮮明な色を出したい場合は、隠蔽性の高いアクリルガッシュを使用するか、溶き胡粉やジェッソなどで下地を作った後に絵具を使用して発色を良くする必要があります。
材料的には絵具の種類はあまり選びませんので、下地と色を調和させたい場合などは、水彩絵の具などを使用しても問題はありません。
パステルなどの粉状のものは、木粉由来のランダムな凹凸のせいで、均一に定着させるのが難しくなりますので、注意してください。
まとめ
木粉粘土の特徴と具体的な商品について解説しました。
木粉独特の凹凸と強度が木粉粘土を選ぶ際のポイントとなります。
また、本来捨てられるはずの木粉を有効利用するという点で環境への配慮も謳える作品になるのも魅力的です。
石粉粘土や軽量粘土など、よく目にする粘土を使った後に目につく粘土かと思いますが、自分の作風や作品コンセプトに合わせて、適したものを選んでいただけたら幸いです。
他にもメジャーな粘土からマニアックな粘土まで、いろいろな粘土について解説していますので、興味のある方は合わせてご覧ください。