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【粘土向け】ニスの種類と失敗例【紙粘土・樹脂粘土など】

eyechatch vernish for clay

粘土で作品を作ったけど、ニスは何を使えばいい?
うまくできた作品にニスを塗って保護したいけど、最後の最後で失敗したくない!

ニスと調べると木工向けの色のついたニスが良く出てきますが、粘土で作った作品の為のニスも専用のものがあります。

また、紙粘土、石粉粘土などの自然乾燥型の粘土とポリマークレイ(オーブン粘土)など粘土の違いでも良くある失敗がありますので、紹介します。

目次

ニスの種類

粘土に塗るニスは大きく4つの性質で分類できます。

  • 溶媒の種類
  • ニスの樹脂成分の種類
  • 塗り方の種類
  • ニスの光沢の種類

例えば「水性アクリルニス ツヤなし ボトルタイプ」「ラッカーウレタンニス ツヤあり スプレータイプ」など各々どれかの性質をもっているニスになります。

それぞれの性質について細かく説明していきます。

溶媒の種類

水性ニス

水、もしくは水に溶ける溶媒(アルコールなど)をベースに作られているニスです。

他のニスに比べて安全性が高く、使い勝手も良い為、最も多くつかわれる種類になります。

デメリットとして、水が抜けないと乾かない為、他のものに比べて乾燥が遅い点が挙げられます。

油性ニス

揮発性の油をベースに作られているニスです。

水性ニスでは溶かすことの難しいニスを溶かすことができるため、乾燥後のニス被膜は強度や耐久性などが強い場合が多いことがメリットになります。

デメリットとしては、溶媒の安全性が水性よりも乏しい為、換気が十分な場所か野外での使用が推奨される点です。

ラッカーニス

揮発性の有機溶剤をベースに作られているニスです。油性と近い性質のニスですが、ベースとなる液の構造が違うため分けられています。

有機溶剤というと安全面での心配がつきものですが、近年使われているものは従来の有機溶剤の代替材料が多く、安全面では少し配慮されています。

 主なメリットは速乾性で、有機溶剤が早く揮発する為、ニスが早く乾くという特徴があります。

 デメリットは油性ニスと同様安全性で、配慮されているといえど、十分換気の上で使用するべき材料になります。

ニスの樹脂成分の種類

アクリルニス(アクリル樹脂)

 アクリルというとアクリル板のような固い樹脂を想像しますが、ニスに使われるものは固いものからやわらかいものまで幅広くあり、どちらかというとやわらかくなるものが多いです。

 水性ニスに取り入れられることが多く、光沢、透明性の高い樹脂です。

 デメリットはやわらかい被膜のものが多く、実用的な用途の作品には向かない点です。あくまで作品の保護や光沢づけに使用する目的で使用すると良いです。

ウレタンニス(ウレタン樹脂)

 強度、耐久性の高い被膜を形成することが特徴の樹脂になります。

 水性タイプのものもありますが、真価を発揮するのは油性タイプのものになります。

 家具などの実用的なものへの使用が多いことからわかるように、実用に耐えうる表面被膜ができることが特徴です。  デメリットは相方の溶媒が油性のものになりがちで、諸々の配慮が必要な点です。

その他樹脂

 ニスの中には樹脂の種類を明確に明かしていないタイプのニスもあります。

 こういった場合については、商品のラベルに記載されている特徴、用途説明、注意書きなどをよく読んで、正しく使用するようにしてください。

塗り方の種類

筆塗タイプ(ボトルタイプ)

 粘土のニスではスタンダードなタイプのニスです。

ボトルの中に入っているもので、筆を使って塗るタイプのものになります。

メリットは使用場所を選ばないという点、デメリットは筆跡が残る場合がある点です。

また、塗ったニスの膜厚が厚くなりがちで、ひび割れなどのリスクも高めです。

スプレータイプ

 缶に入ったニスを噴霧して塗装するタイプのニスです。

 筆跡が残ることがないので、綺麗な表面塗装が可能です。

 デメリットは、スプレーで飛沫が出る関係で、塗装ブースや野外など周りを汚染に配慮した場所で塗装する必要があることです。

 また、スプレーの影に隠れてニスが塗りきれていない場合もあるので注意しましょう。

ニスの光沢の種類

ツヤあり(グロス)

塗った後に光沢が出るタイプのニスです。

基本的にはニスの樹脂成分のみが表面に残るようになる為、ニスのスタンダードはツヤありになります。

ツヤ消し(マット)

塗った後に表面のつやが消えるタイプのニスです。

基本的なニスの成分に加え、艶消し材(粉やワックスなど)が含まれています。

その他特性

 これまで上げた特徴の他に、ニスには耐水性をうたっているものがあります。

 特に水性アクリルニスは基本的には耐水性のないものが多く、実用面での使用に向きませんが、そんな中でも耐水性のあるものは、比較的実用的な用途にも使用できます。

ニスを塗るときの失敗と注意点

塗った色がにじむ

水彩絵の具や水性ペンなど、水になじむ絵具で着色した後に、水を含む水性ニスを塗ると絵具がとけ、色がにじんだり、筆などで色を引いてしまったりすることがあります。

水性の絵具には水性のニスを使わない、油性の絵具には油性のニスを使わないなど、同系統の溶媒のニスを避けるとこの失敗を防ぐことができます。

ニスを塗った作品同士がくっつく

水性のニスで良く起こる失敗になります。

ニスを塗る前の粘土が十分乾かない状態、もしくは塗ったニスが十分に乾かない状態で、ニスを塗った作品同士がくっついてしまうような失敗が起こることがあります。

粘土もしくはニスに含まれている水は作品表面から抜けていきますが、乾きが不十分である場合、ニスの隙間を縫って水が抜けていくことになります。

すると、ニスの表面が一時的に水にぬれたような状態になり、やわらかくなり、やわらかくなったニス同士が接触し続けることで、くっついてしまいます。

これを避けるには、粘土とニスをそれぞれ十分に乾燥させることが重要となります。

粘土は種類や大きさ、乾燥する場所の温度や湿度にもよりますが、1週間~10日程度、ニスは塗り終わってから2日~5日程度が十分な乾燥の目安になります。

ニスの表面がべたつく

粘土とニスの相性が悪いとき、完全に乾かしてもニスの表面がべたつくことがあります。

ポリマークレイ(オーブン粘土)に専用のニス以外のニスを使用した際に良く起こる失敗になります。

ポリマークレイには、樹脂をやわらかくする油が含まれており、焼いて硬化させた後も、一部作品の中で自由に移動します。

この油が粘土とニスの境目まで達すると、ニス被膜の樹脂に侵食し、ニスをやわらかくしたり、べたつかせたりしてしまいます。

対策としては、使用した粘土に適したニスを使用することが対策になります。 ポリマークレイ以外でも、自然乾燥の樹脂粘土などでも起こる場合もありますので、基本的に粘土とニスのメーカーはそろえて使った方が失敗しにくくなります。

塗ったニスの表面がひび割れる

 凹凸が多い作品のへこんだ部分に液が溜まり、部分的にニスの膜が厚くなってしまった場合に起こりやすい失敗です。

 凹凸が多い作品は、筆で塗った場合、筆の届かないところなどに液が溜まってしまい、そこだけニスの被膜が厚くなってしまうことがあります。

 ニスは乾燥する際に水が抜けて縮み、薄い膜を作りますが、その際に厚くなった部分だけが奥まで乾くのが遅くなり、周りの既に乾燥したニス被膜に引っ張られるような形になり、ついにはひび割れてしまいます。

 対策は、粘りの少ないニスを使って液溜まりが起きないようにするか、スプレータイプを使用するとひび割れは起きにくいです。

 また、粘土とニスの相性や、塗った絵具、下地材などとの相性によってもひび割れを起こすことがありますので、全体にニスを塗る前に、目立たない場所で試し塗りをして様子を確かめると深刻な失敗を防げます。

こんな時どんなニスを塗ったらいい?

水性絵具(水性ペン)で着色した作品

油性ニスもしくはスプレータイプの水性ニスをお勧めします。

水性の着色剤は、水に触れるととけて流れたり、にじんでしまうので、水を含まないタイプのニスを使用してください。

スプレータイプの水性ニスは、水を含まず、アルコールのみで構成されているものも多い為、水彩絵の具などにも対応できます。

細かい造形の仕上げに便利なスプレータイプニス。
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凹凸の多い作品

スプレータイプのニスがおすすめです。

凹凸が多い作品(花やフェイクスイーツなど)は、筆塗タイプのニスだとニスの溜まりができ、乾燥が均一にならなかったり、液だまりができてべたつきやひび割れの原因になったりしがちです。

全体的に均一にニスを塗りたい場合は、スプレータイプでコーティングする方が良いです。

食品の近くで使う作品(箸置きなど)

水性アクリルニスの耐水性のあるタイプのものを使用する良いです。

市販の油性タイプ、ラッカータイプでは粘土の中に残留する溶剤が悪さをするケースもあり、あまりお勧めできません。

水性であれば、基本的な安全性も高く、耐水性があれば乾燥後も中の成分が溶け出すことも防げます。

ただし注意点として、お皿やカップなど、水に長期間触れる前提の作品は粘土で作った作品にニスをしただけでは不十分です。絶対に使用しないようにしてください。

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ポリマークレイ(オーブン粘土)で作った作品

使用したポリマークレイ専用のニスを使用してください。

ポリマークレイは粘土の成分の中に沢山の油分が含まれており、この油分が粘土の硬化後もゆっくり移動することで、数週間、数か月後に、ニスの被膜に悪さをすることがあります。

その為、基本的にポリマークレイの作品には、使用したポリマークレイのメーカーが出しているニスを塗ることを推奨します。

ポリマークレイ「FIMO」には専用のニスを使用で仕上げるのがおすすめ。
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まとめ

ニスの種類と失敗例について解説しました。

ニスは作品の保護などの為に重要なものですが、選び方や塗り方を間違えると、せっかく作った力作もきれいに仕上がらなくなってしまうことがあります。

説明を書いていて、作品に対してニスは脇役なのに、種類も注意する部分もたくさんあって、わかりにくい材料だなと改めて感じました。

良く起こる失敗例とその対策について知り、自分の作品に合ったニスを選んでいただけたらと思います。
ニスは一度買うと結構な頻度で手元に残ることが多いので、今回おすすめしたもの以外でも使えるかどうか判断したい場合は、実際に塗ってみるのが一番です。
ただ、一気に全部塗ってしまうと取り返しがつかなくなることが多いですので、目立たない場所で時間をおいて様子を見てから、使ってみてください。

この記事を書いた人

造形材料メーカーで十数年勤務を経験。
作品に最適な材料選定の一助なれたら嬉しいです。

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