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【フィギュア向け】粘土の種類と選び方

フィギュアを作ってみたいけど何を使って作ればいいかわからない。
とりあえず石粉粘土を使ってみたけどほかにいい材料はない?

とにかくフィギュアを作ってみたい方も、次のステップに進みたい方も、ここで粘土の種類と特徴を確認して、自分に合ったねんど選んでいきましょう。

もう既にフィギュアを粘土で作ってみようかなと思っている方は、こちらの記事も併せてご覧ください。

目次

フィギュア造形に使う粘土4種

フィギュアの原型制作によく使われる粘土材料は下の4つになります。

  • 石粉粘土
  • オーブン粘土(ポリマークレイ)
  • エポキシパテ
  • インダストリアルクレイ

 石粉粘土は初心者向けによく紹介されるねんどですが、やわらかくて扱いやすいラドールタイプと固くて微細な造形がしやすいファンドタイプに分かれます。

 実際にイベント出展などをする方は、オーブン粘土、エポキシパテなどを使用している人が多いようです。

 インダストリアルクレイは少し毛色が違った油系ねんどになりますが、実際に使われる場面もありますので、紹介しようと思います。

石粉粘土

 石粉粘土はねんどの中の水が抜けて硬化する「自然乾燥タイプ」の粘土になります。

 名前の通り、石の粉と水溶性の糊剤を主成分としている為、石粉粘土と呼ばれています。

 樹脂を主成分としていないので、後に説明する材料よりも原型寿命が長いのも特徴です。

価格も比較的安価で、水で粘土の固さ調整などもでき、使い勝手がよい為、初心者の方は、まずこの粘土から始めるとよいかと思います。

市販されている石粉粘土は大きく2種類あります。
柔らかく作業しやすい「ラドールタイプ」と、固く微細造形に向いている「ファンドタイプ」の大まかに2通りに分かれます。

 100均でも石粉粘土が売られていることがありますが、店舗によって扱っているタイプが異なり、どちらも石粉粘土としか書いていないので、初めての方はメーカー品を購入してタイプの違いを理解するとよいかと思います。

 それぞれどんな特徴があるか説明します。

ラドールタイプ

ラドールタイプはフィギュア造形用の中ではやわらかく、サクサクと作業できる点が特徴の粘土です。
使用するのは初心者だけではなく、特撮系や大型でダイナミックなフィギュアを作る際に用いられやすい粘土になります。
代表的なものは㈱パジコが販売している「ラドール」で、フィギュアだけではなくアート分野などでも広く使われています。

美術、手芸、ホビーなど、すべての分野で癖なく使える石塑粘土。
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フィギュア用途の場合は硬化後の粘土の固さも細かい作業をするときに重要になってきますので、ラドールよりも強度のあるラドールプレミックスから始めるのをお勧めします。

初心者でも上級者でも扱いやすい石粉粘土。
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 ラドールタイプは「石塑粘土」とも呼ばれることがあります。
 この名称の由来については、関連記事で詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。

ファンドタイプ

フィギュア用石粉粘土の代名詞といっても過言ではない粘土で、粘土自体が固い為、人物のフィギュアやキャラクター作品など一般的~小型のものを作る際に向いている粘土です。
細かい微細な作業をしてもあまり変形しにくく、伸びがよい為、造形時にひび割れなどが起きにくいのが特徴になります。
代表的なものはボークスアートクレイが製造している「ファンド」で、特に扱いやすいニューファンドがおすすめです。

フィギュア造形の登竜門。細かい造形に適した石粉粘土。
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 小学校の図画工作からずっと粘土を触ってない方だと「思ってたのと違う!」と思う固さですが、入門書によってはまずファンドをお勧めしているものもあります。
 フィギュア原型を作る人は一度は使ったことのあるまさに「フィギュアの登竜門」的な粘土ではないかと思います。

オーブン粘土(ポリマークレイ)

 オーブン粘土はオーブンなどで加熱することで硬化する加熱硬化タイプの粘土になります。
主原料は樹脂(塩化ビニルのものが多い)で、ポリマークレイとも呼ばれています。
粘土は固く、微細造形に向いているのはファンドに近いですが、加熱するまでは放置していても固まらないのが最大の特徴になります。

こちらも原型を作る方の間では有名な材料で、固さはファンド並みかそれ以上に固いです。
よく練ったり、人肌くらいに暖かくなるとやわらかくなって造形しやすくなります。

 代表的なものはポリフォーム(アメリカ)のスーパースカルピーで、細かい造形をした際に変な弾力が少なく、またきめも細かい為、とても造形しやすい粘土です。

 フィギュア原型制作では灰色で凹凸がわかりやすく、やや硬さが増して細かい造形がしやすいグレイスカルピーが主流な印象があります。

フィギュア造形向けのポリマークレイ。硬化タイミングは自由自在。凹凸のわかりやすいグレーカラー。
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 自然硬化タイプとは違い、液を蒸発させて固めているわけではなく、塩化ビニルの中に液を閉じ込めて動かないようにして固めているので、オーブンを高温にしても硬化が極端に早くなるわけではありません。
 そのため、商品に合った適切な温度で加熱するようにしましょう。

エポキシパテ

 エポキシパテは主剤、硬化剤の2成分で構成されており、二つを混ぜ合わせることで硬化する反応硬化タイプの粘土になります。
 主原料がエポキシ樹脂の為、エポキシパテ(略してエポパテ)と呼ばれています。

 販売されている容量もフィギュア1体作るのには少ないくらいの量で売られているので、ベースを他の粘土で作って髪の毛や指などの細かいパーツをエポパテで作ったり、欠けや補修に使用されるのが主な使用用途ですが、芯以外はすべてエポパテで作るという方もいらっしゃいます。

 エポパテの最大の特徴は硬化後の固さになります。
 石粉粘土、オーブン粘土には見られないカチカチの硬化物になります。
 その為、硬化後の仕上げ作業(ナイフでの削りややすり掛けなど)で力が入りすぎても造形が壊れにくいというのが大きなメリットです。

 デメリットとして、一度混ぜてしまうと反応が始まって、規定時間で固まってしまい、元に戻らなくなるため、数日かけて造形したりする場合にはあまり向きません。使用する量だけを混ぜて使うようにしましょう。

 エポキシ樹脂自体は熱により硬化速度が促進されるため早く固まりますが、オーブンなどで高熱をかけるとエポキシ樹脂自体の反応熱も相まって高温になりすぎるためとても危険です。
 お急ぎの場合でも温めるのは夏の暑い日くらいの温度にしておきましょう。

 エポパテは国内メーカーだとタミヤもしくはウェーブが販売しています。
 細かい造形をしたい場合はタミヤ・エポキシ造形パテ(高密度タイプ)、あまり力を使わずサクサク作業したい場合はウェーブのミリプット・エポキシパテをお勧めします。
 1体全部エポキシパテで作りたい場合は、バケツタイプのApoxie Sculptなどもあるので、慣れてきたら使ってみてもいいかもしれません。

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 エポキシパテは、ホームセンターなどでセメダインなどの接着用のエポパテ盛りますが、弾力があったり、べたついたり、切削ができなかったりなど、造形に向かない性質があるので避けた方が良いです。

インダストリアルクレイ

 インダストリアルクレイは、温めると柔らくなり冷えると固くなる冷却硬化型の粘土になります。
 主原料は油(ワックス)の為、大局的にみると油粘土の仲間になります。

 フィギュア原型を作られている方でも一部の方しか使っているのを見かけませんが、海外の原型を見るとインダストリアルクレイを使われていると思われる作品が見られることがあります。
 国内で有名な用途は自動車の設計過程におけるクレイモデリングです。
 「インダストリアル=工業的な」という意味で、フィギュアで使われる場合もロボットやメカニカルなモチーフの作品に使われていることが多い印象があります。

 インダストリアルクレイは冷えるとすぐ固まるので手回しがよい点、原形制作をして型を取った後、再利用できる点などが特徴といえます。
 また、ほぼ固まった状態でも削いだり均したりという作業はできるため、平面や直線が多い造形をするときは作業しやすいかもしれません。

 油粘土であるため、インダストリアルクレイでできた原型自体に着色をしたり、長期保存したりすることには向いていません。フィギュア原型は複製するために型を取ることがほとんどですので、複製前提の原型づくりをするための粘土になります。

 やわらかく保つために加温しておく必要があったり、固まった後、大きくへらを入れたい時などは加温できる器具があると効率がよかったりなど、突き詰めると専用の器具が多く必要になってくるものになります。

 しかしながら、一度ものをそろえてしまえば、硬化を待つ時間が少なくて済むうえに、気に入らなければやわらかくできてしまうのでものすごく手回しが良い材料です。限られた時間でバンバン原型を作っていく上級者向けの粘土になるかと思います。

 国内では新日本造形のアルテ65、トゥールズインターナショナルのインダストリアルクレイなどがありますが、いずれも供給が不安定な状態が続いています。輸入品ではモンスタークレイが比較的手に入りやすいかと思います。海外では画材店などにも置いているところもありますが、日本ではなかなか手に入りにくい印象がある材料です。

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粘土以外で原型制作に使われる材料

 粘土ではありませんが、フィギュア原型を作る際に使用される材料もいくつかありますので紹介します。

造形ワックス

 造形用ワックスはその名の通り油脂の塊で、大きくて四角いろうそくと考えるとイメージしやすいです。

 粘土のようにこねて形を作っていくのではなく、造形ワックスを彫ったり削ったりして形を作っていきます。作り方としては彫刻を彫っているイメージの方が近いです。
 ただ、専用のへらを使って、ワックスを盛りたいところにはワックスを溶かして盛り上げることができるので、修正可能な彫刻といった感じです。

 最大の利点は切削の際に粉塵が舞わないことで、デメリットは専用の装備が必要となることです。
 シルバーアクセサリーなどの原型制作にも使用されるので、かなりプロ仕様の材料になります。

 商品としてはSDワックスがスターターキットなども充実していて、挑戦してみるには良いかと思います。HPにも使い方や魅力などが紹介されています。

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ポリパテ

 ポリエステル樹脂をパテ(ペースト)状にしたもので、主剤と硬化剤を混ぜて固める反応硬化タイプの材料です。
 ペースト状なので、直接で形を作り込んでいくことはできませんが、アルミ線芯材に盛り付けて、固めてから削りだしていく彫刻的なアプローチで原型を制作する材料になります。
 反応硬化タイプという面ではエポキシパテと性質が似ていますが、エポキシパテは早くても3~6時間硬くなるまでに時間がかかるのに対し、ポリパテは40~60分で固まるため、次の作業に移れるので手回しが良いのがメリットです。
 ある程度完成した原型の部分的な補修や修正などにもスピーディに対応できるので、中級~上級者の方が使用するイメージのある材料になります。
 フィギュア造形向け用途としては、ウェーブから比較的少量の商品が販売されていますので、こちらから試されると良いかと思います。

ホビー向けポリエステルパテ。部分的な補修などに。

フィギュア原型制作では用途が限られる粘土

樹脂粘土

 樹脂粘土は、酢酸ビニル樹脂を主体とした自然乾燥型の粘土で、稀に樹脂粘土でフィギュアを制作する場合があります。
 ただ、乾燥時のヒケ(収縮)が大きい点や、乾燥した後の加工がしにくいなど、繊細な原型制作に向かない特性が多い粘土です。

 樹脂粘土を使用してフィギュア制作する場合は、デフォルメされた動物などのキャラクターや、複製を前提としない1点物のフィギュアを作成するといった限定された条件で使用すると良いかと思います。

 原型師の方の作品展などで、精巧な昆虫の羽や腹の部分などに使用しているのを見たことはあり、石粉粘土などにはない透光性や透明感が出ますので、そういった表現がしたい場合は試してみても良いかもしれません。

 代表的なのはサン工業(日清アソシエイツ)のグレイスで、水彩絵の具を混ぜたりすることもできますので、これぞという1点の作品を作りたいときに試してみてください。

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まとめ

フィギュア造形用の粘土は大まかに分けると4種類。

  • 石粉粘土
  • オーブン粘土(ポリマークレイ)
  • エポキシパテ
  • インダストリアルクレイ

 特に石粉粘土、オーブン粘土(ポリマークレイ)は本格的にフィギュアを作ってみたい!という方には経験するべき材料になるかと思います。

 本記事で紹介した粘土を全部使ったほうがいいということは全くありません。
 それぞれの粘土のメリット、デメリットを踏まえて、自分に合った材料選びの参考にしていただけたら幸いです。

 本ブログでは、他にも用途別にどんな粘土を使えばよいかについても書いていますので、併せて読んでいただけると幸いです。

この記事を書いた人

造形材料メーカーで十数年勤務を経験。
作品に最適な材料選定の一助なれたら嬉しいです。

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