油粘土は紙粘土と並んで最もなじみの深い粘土です。
しかし、一言に油粘土といってもいろいろな用途があり、また、それぞれに適した油粘土が存在します。
ここでは、油粘土の種類と用途、加えてその特徴について説明していきたいと思います。
用途別油粘土の種類
- 保育・教育用油粘土
- 彫塑用油粘土(レオンクレイ、イタリー油土など)
- 工業デザイン用油粘土(インダストリアルクレイ)
- クレイアニメーション用油粘土(クレイトーン、プラスタリーナ)
日本で最もなじみが深いのは、保育・教育用油粘土かと思います。
油粘土の中でもやわらかく、扱いやすいことが特徴で、100均などでも安価に手に入れることができます。
その他の用途の油粘土は、一気に専門性が増し、美術を専攻する高校や大学で初めて目にするということも多いと思います。
以下では、それぞれの用途の粘土にどんな特徴があるか解説していきます。
保育・教育用油粘土
保育・教育用の粘土は、保育園、幼稚園や小学校低学年くらいまでで使われる油粘土になります。
適度な柔らかさがあり、臭いが少ない、安全な原料が使われている、手に付着しにくいなどの特徴があり、商品によっては水に浮くほど軽い軽量油粘土や、可燃ごみとして廃棄できるよう材料を厳選しているものもあります。
主なターゲットが保育施設や教育施設である為、たくさんの子供が一斉に使っても不要なトラブルが起きにくいようにニーズを吸い上げて作られています。
商品単価は比較的安く、100均でも手に入れることができます。
一時期は円安や原油高の影響でメーカー品の油粘土の価格が一時的に高くなっていましたが、
最近は少し値段が落ち着いて500円前後から販売されているものも出てきています。
細かい造形をすることを主眼に置かれていない為、大人が使うと持っているうちに形が変わってしまったりする為、大人の作品作りには不向きかもしれません。
保育・教育用の粘土は、いろいろなメーカーからたくさんの種類が出ていますが、メーカーブランドでは中部電磁器工業(CEC)の「HOIKU」などが定番です。
彫塑用油粘土
美術専科で彫刻を専攻する際に使用される粘土です。アカデミックな分野で使用されることが多い印象ですが、一部プロダクトデザインや模型制作などに使用されることもあるようです。
粘土は商品にもよりますが、大人の力で固いと感じる程度で、基本的には常温で作業します。
粘土の使用前に良くこねる作業(コンディショニングという)をして、やわらかくしてから作品を制作します。
臭いは少しありますが、造形性が高く、固さがあるため、形が崩れにくく、細かい造形に向いています。
また、油粘土に使われている油脂成分は、空気と触れて徐々に劣化し、固くなっていく性質がありますが、この種類の粘土は比較的長持ちしやすい構造の材料となっています。
国内メーカーでは瀬戸製土の「Leon Clay(レオン油土)」、海外ではイタリアの「PLAXTIN(イタリー油土などと呼ばれている)」が比較的手に入りやすいものになります。
工業デザイン用粘土
車やバイクなど工業プロダクトのクレイモデリングに使用される油粘土です。
インダストリアルクレイという名前でも呼ばれています。
他のどの油粘土とも異なり、常温では変形できないほど固く、使用には基本的に専用のクレイオーブンなどで温めて使用します。
冷却することで硬化し、温めるとまた軟化して造形可能になります。
固まった状態ではあらかじめ作った型やツールを押し当てて削り、平滑な面を作り出すことができます。
極めて高い造形性を有した蝋のかたまりと考えるとイメージしやすいかもしれません。
造形する為には粘土を保温する為の器具や加熱できるヘラなど専用の用具が必要になる場面が多いですが、固くなってくれる粘土の中では手回しが良く、自分のイメージを壊さずに手直しできるという点が強みです。
国内ではアルテシリーズなどが手に入りやすい材料になります。
クレイアニメーション用油粘土
NHKで人気の「ニャッキ!」などでも使用されているクレイアニメーション向けの粘土です。
油粘土は使われている油脂の色と土の色でカラーを作るのが成分的に難しいですが、クレイアニメーション用の油粘土はこれを克服して鮮やかで多彩なカラーバリエーションを有しています。
コマ撮りで作られているクレイアニメーションは、石粉粘土などであらかじめパーツを作って行う方法もありますが、固まらない油粘土はちょっとした動きをつけるのにも相性が良く、柔らかな表現ができることが特徴的です。
また、粘土を温めて液状にし、多種のカラーを組み合わせることで、マーブル状な表現や、液体に近い質感を出すこともできるなど、他の油粘土に比べて表現の幅が広いです。
メーカーは基本的に国内にはなく、アメリカのVan Aken社製造の「clatyoon(クレイトーン)」や「PLASTALINA(プラスタリーナ)」が日本では流通しています。
番外・石膏型取り用の油粘土
石膏で立体型を取る際、分割線より下を油粘土に埋め込み、出ている部分だけに石膏を流すことで、石膏型を作成します。
基本的に油ねんどであれば石膏が侵食しないので、どんな油粘土を使用しても基本的には良いのですが、レオンクレイのようなある程度固い粘土の方が石膏の接合面が平滑になりやすく、きれいに取れやすくなります。
保育・教育向けのやわらかい粘土の場合、平らにしたと思っても意外と油粘土表面に凹凸があったり、石膏が硬化する際に発生する熱の影響で変形したりする可能性がある為、型がきれいに取れない可能性があります。
もし手元にある粘土を使ってうまく型が取れない場合は、レオンクレイを試してみてください。
まとめ
油粘土の用途と種類について説明しました。
一言に油粘土といっても、作ろうとするものによって種類がたくさんあり、それぞれの特徴、使い勝手が違います。
子供に遊ばせるためなどの場合であれば、100均やホームセンターに売っている油粘土を選んでも良いと思いますが、本格的に粘土を作って何か作ろうと考えた時は、今回の内容をもとに、用途に合わせた油粘土を選んでみてください。
また、油粘土の対比として、水粘土というものもあります。美大受験などで使用される粘土で、アカデミックな場面では登場しますので、気になった方は関連記事に目を通していただけたら幸いです。