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樹脂粘土とは ~特徴や他粘土との違いも解説~

eye catch resin clay

樹脂粘土を使って何か作りたいけどそもそも樹脂粘土って何?

素敵な作品が樹脂粘土製だったけど、樹脂粘土って何でできているの?

いろいろなハンドメイド作品を手に入れられるようになった昨今、美しい作品の材料に樹脂粘土が使われていることを目にする機会も多くなってきました。

ここでは樹脂粘土とはどんなものかを、成分や特徴、他の似た粘土との違いなどから解説していきたいと思います。

目次

樹脂粘土とは

 樹脂粘土は「酢酸ビニル系エマルジョン」を主原料とした自然乾燥型の粘土のことです。

 エマルジョンとは「乳剤」という意味で、牛乳や乳液などのように、水に溶けないものを水に細かく分散して溶けているような状態にしたものです。

 酢酸ビニル系エマルジョンは、他の用途では木工用ボンドに使われているものが身近です。

 樹脂粘土のルーツは「パン粘土」と呼ばれる食べ物の「パン」と「木工用ボンド」を混ぜて作った素材で、メキシコや中南米でパンフラワー(パンの花)という作品を作るのにつかわれていました。

 その名残もあって、酢酸ビニル系エマルジョンの相方に使われるのは「デンプン」であることが多く、ニップンや日清製粉グループなどの小麦粉メーカーとつながりのあるメーカーが良質な樹脂粘土を製造しています。

樹脂粘土の特徴とメリット・デメリット

樹脂粘土は他の粘土と比べて以下の特徴があります。

  • 乾燥すると柔軟性がある。
  • 多少の透光性がある。
  • 表面が滑らかに仕上がりやすい

これらの特徴は木工用ボンドが乾いた時を考えていただくとイメージしやすいと思います。

 主原料の酢酸ビニルエマルジョンが持つ性質がそのまま樹脂粘土の特徴となります。

 透光性については、相方で入っているデンプンなどの材料の影響を受けて商品によって光の通し方に差はありますが、石粉粘土や軽量粘土に比べると光の通りは良いです。

 これらを踏まえたうえで、樹脂粘土を使うメリット、デメリットについて解説します。

樹脂粘土を使うメリット

樹脂粘土の特徴から、樹脂粘土を使うメリットは次のようなものになります。

  • 薄い作品でも作品が壊れにくい。
  • 透けた表現、奥行きのある色彩表現ができる。
  • できた作品が綺麗に見えやすい。

こういったメリットを生かして、樹脂粘土を使った作品には肉厚の薄い作品(クレイフラワーや鳥の羽など)や、フェイクフード・フェイクスイーツ(パンや和菓子など)の作品が良く作られます。

 また、仕上がりが良い点でミニチュアキャラクターやデフォルメされたキャラクターなどのフィギュア製作にも使われることがあります。

樹脂粘土を使うデメリット

 樹脂粘土を使う上で、他の粘土に比べるとデメリットとなる点もあります。

  • 乾燥後、削ったり磨いたりしにくい。
  • 一度固まると粘土状に戻せない。
  • 材料価格が高い。

 石粉粘土などの人形や美術作品を制作するための粘土は、水で濡らすと柔らかくなったり、粘土が固まってから削ったりすることができるため、何度も手直しができます。

 これに対し樹脂粘土は、粘土で作った形がそのまま乾いて作品になり、後加工がしにくい素材なので、粘土の状態で作り込む必要があります。

 また、他の自然乾燥型の粘土に比べると大きさや重量当たりで倍くらいの値段の粘土ですので、小さくて精密な作品を作るのに向いた粘土ということになります。

樹脂粘土と他の粘土の違い

 ホビー分野やアート分野でよく使われている粘土と樹脂粘土との違いについて、表にまとめてみました。

粘土の種類樹脂粘土石粉粘土軽量粘土紙粘土
仕上がり
樹脂風の仕上がり

石風の仕上がり

やや粗い

粗い
硬化後加工
(切削)
×
基本出来ない

やりやすい
×
ほぼできない

できるがやりにくい
壊れにくさ
色の練り込み××
重さやや重いやや重い軽い重い
価格高価やや安価やや安価安価
推奨作品(例)アクセサリー
ミニチュア
クレイフラワー
創作人形
フィギュア
アート作品
フェイクフード
クレイフラワー
大型の作品
重量感のある作品
(最近はあまり使われない)

 並べてみるとそれぞれの違いがよくわかるかと思います。

 樹脂粘土は仕上がりの良さと価格の高さから、アクセアリーやミニチュアフードなど、手のひらサイズ前後の作品を作ることに向いている粘土になります。

 樹脂粘土で少し大きめの作品を作ってみたい場合は、芯材を使用したり、比較的安価な軽量粘土と混ぜたりして、重さや費用の面を補うと使い勝手がよくなります。

 また、樹脂粘土は他にはない透明感を持っている粘土なので、絵具の練り込みとの相性も良いです。

 花や果物などの奥行きのある色彩を表現したい場合は、樹脂粘土を使うと良いです。

樹脂粘土と相性の良い粘土

 樹脂粘土は、単体で使用することも多いですが、他の粘土の特徴を取り入れたい場合に混ぜて使うのに相性が良い粘土がいくつかありますので紹介します。

樹脂粘土×軽量粘土

 軽量粘土は樹脂粘土と混ぜてよく使われる粘土の一つです。

 軽量粘土を混ぜることで、作品全体を軽くしたり、作品に白みを足したり、不透明感を出したりすることができます。

 デメリットとしては、混ぜるときに少しベタベタするという点が挙げられます。

 べたべたが気になる場合は、メーカー品であらかじめ樹脂粘土と軽量粘土を混ぜたような粘土が販売されていますので、そちらを使用するといいでしょう。

樹脂粘土×透明粘土

 樹脂粘土自体もある程度透明性がありますが、透明粘土を混ぜることで、さらに透明感を増すことができます。

 透明粘土もシリコン系や樹脂系などいろいろなタイプのものがありますが、樹脂粘土と混ぜて使用できる透明粘土は「すけるくん」という樹脂粘土タイプの透明粘土になります。

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 デメリットとしては入れすぎるとヒビが若干入りやすくなりますが、樹脂粘土単体では実現できない透明感を出すことができるようになります。

樹脂粘土と混同しやすい粘土

 樹脂粘土は「酢酸ビニル系エマルジョン」を主原料とした自然乾燥型粘土ですが、同じく樹脂を原料とした粘土で間違われやすい名称の粘土があります。

樹脂粘土とポリマークレイ

 樹脂粘土は「エマルジョン」という水に樹脂を分散させたタイプの材料が主原料ですが、ポリマークレイは、成分上水を含まない構成となっている加熱硬化型の粘土です。

 フィギュア造形の分野などでは、自然乾燥型の樹脂粘土があまり使われない為、ポリマークレイを「樹脂でできた粘土」という意味で樹脂粘土ということもあり、よく混同されます。

 海外などではポリマークレイが主流で日本の樹脂粘土が普及していない場合もある為、国や作る作品のコミュニティによってはポリマークレイのことを樹脂粘土という場面もあるかと思います。

 ポリマークレイが主流の場所で日本の樹脂粘土を説明する場合、別の呼び方で樹脂粘土を呼ぶ必要がありますが、その場合は後に説明する「コールドポーセリン」という名前が比較的普及した呼び名になるかと思います。

 別記事でもこの点については詳しく説明していますので、参考にしてみて下さい。

樹脂粘土と軽量樹脂粘土

 樹脂粘土は「酢酸ビニル系エマルジョン」を成分に含む粘土であるのに対して、軽量粘土は「樹脂軽量化材」を使用して軽量化された粘土のことを指します。

 では【軽量樹脂粘土】は何を指すのかというと、基本的には「酢酸ビニル系エマルジョン」を成分に含み、「樹脂軽量化材」で軽量化された樹脂粘土×軽量粘土の性質を併せ持った粘土のことを指します。

 しかしながら、稀にただの軽量粘土のことを「軽量樹脂粘土」言っているメーカーもあります。

 これは紙粘土などの重い粘土が主流だった際に新たに「樹脂軽量化材」を使用したことの名残で比較的歴史の長い軽量粘土に使われているようです。

 軽量樹脂粘土は、基本的に樹脂粘土がベースの軽量化された粘土のことを指しますが、間違って軽量粘土を買ってしまわないように成分や作品例などを確認してから購入するようにしましょう。

樹脂粘土の保存方法

 樹脂粘土はボンドのような成分が入っているため、他の水性の粘土と異なり、一度固まってしまうと粘土状に戻すことができません。

 その為。保存の際には、粘土が乾燥しないように保存しなくてはいけません。

 具体的には一度開けた樹脂粘土はパッケージから全て出して、粘土全体をラップで覆ってしまうのが良いです。

 パッケージのまま保存したい場合は、パッケージの上からラップをかけても良いです。

 ラップを巻いた粘土はジップロックなどの袋に空気を極力出した状態で密閉しておけば完璧です。

 また、樹脂粘土の保存場所は暑すぎても寒すぎても良くありません。

 温度が比較的安定する紙やプラスチック、木製の箱の中に入れて、室内の冷暗所に置いて保管すると良いでしょう。

おすすめの樹脂粘土

 樹脂粘土は原料にデンプンを使用する為、小麦粉メーカーの文化事業で製造されているものが代表的な樹脂粘土になります。

 粘土としてはサン工業(2024年1月に日清アソシエイツから事業譲渡)の「グレイス」と「コスモス」という樹脂粘土が手に入りやすく、王道の樹脂粘土と言って良いかと思います。

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 樹脂粘土特有の透明感を楽しみたいという場合は、ニップン系の粘土メーカーのジャックスが販売している「プロフェッショナルA」と「すけるくん」を合わせて使うのがおすすめです。

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 また、樹脂粘土でよく取り上げられる100均のダイソーから発売されている「樹脂粘土」は他メーカーの樹脂粘土にはないコシや扱いやすさがあり、おすすめです。

グラム単価でみるとメーカー品より高価ですが、カラーバリエーションが豊富で、メーカー品とは違った良さがあります。

自分で作れる樹脂粘土「コールドポーセリン」

 樹脂粘土は実は自分で作ることができます。

 日本の樹脂粘土は海外でいうところの「コールドポーセリン」であることは前述しましたが、これは「ボンド」と「コーンスターチ」を混ぜたり温めたりしながら粘土状にしていく造形材料になります。

 市販の粘土に比べて自家製の粘土では、粘土自体と粘土でできた作品の保存性を維持するのがとても難しいです。

 その為、作った作品をすぐにダメにしたくない場合は、市販の樹脂粘土を購入することをお勧めします。

まとめ

 樹脂粘土とはいったい何なのか、どんな特徴があり、どんな作品に向いているのかをできるだけ網羅的に説明しました。

 樹脂粘土はいわゆる従来の粘土とは異なり、「作品の仕上がりが良い」、「透明感がある」など、他にはない特徴のある粘土になります。

 樹脂粘土が使われる作品としては、アクセアリーやクレイフラワーなど、他の粘土に比べると比較的小ぶりな作品が多いです。

 ただ、粘土ほど自由に形を作れる材料もありませんので、樹脂粘土の特徴から、自分の作る作品に向いていそうだと思った場合は、他の用途にも使ってみるのも面白いと思います。

 本記事が読者様の素材選びの一助となれれば幸いです。

 また、他の粘土材料についても特徴や用途を詳しくまとめた記事がありますので、興味のある方は合わせてご覧ください。

この記事を書いた人

造形材料メーカーで十数年勤務を経験。
作品に最適な材料選定の一助なれたら嬉しいです。

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